2013年5月31日金曜日

的矢牡蠣と佐藤忠勇   Dr. Tadao Sato









三重県ブランド 第一号認定品
冬のグルメ
三重県志摩市磯部町的矢

日本の近代養蠣で忘れてならないのがこの方
カキ養殖の先駆者
佐藤忠勇博士である (1887~1984)

大正八年東北帝大(現東北大)の研究員として当時本格化し始めていた
真珠養殖の水質関係の研究のため的矢(まとや)現在の志摩市磯部町的矢 に赴いた
見瀬辰平と真円眞珠研究をしたが失敗 その後真珠養殖からは身を引いた

佐藤博士は牡蠣に着目し その研究に没頭した
的矢は三本の川が湾にそそぎプランクトンの発生 水温 塩分潮流などが
牡蠣養殖に最適と判断した

ここで貝殻についた稚貝を海中につるす「垂下式牡蠣養殖法」を開発した
通常2~3年を要した時間が1年に短縮される画期的技術であった  
筏を組み大規模に養殖が可能となり
博士はその普及に全国を飛び歩いたとある
だが博士を一躍有名にしたのは「流水海水浄化装置」による無菌カキの生産に成功
し全国にその方法が採用され現在の「清浄無菌カキ」を作り出したこの人の恩恵で
ある


カキの清浄化への研究

カキを食することに起因する食中毒症状は多くの原因があり一部まだ解明されていない
主に貝毒 細菌があげられるが近年ノロウイルスの名も挙がってきている
博士の開発した方法はよくご存知の方もみえるとは存じますが
念のため

水揚げしたばかりのカキはその体内に多くの不純物を蓄積している
カキを清浄用プールにいれ紫外線で殺菌した海水を流すこと20時間以上
清浄海水をカキの消化器官を通過させることで除去したものです



その後昭和30年「オゾン 紫外線併用殺菌海水浄化装置」の特許を取得
清浄無菌牡蠣の技術を確立し 「的矢清浄無菌牡蠣」のブランド力を高めた
それ以前は塩素を用い殺菌などといういささか乱暴な方法もとられていたようです
全国的にこの清浄滅菌カキの手法が取り入れられ
安心して食べられるようになった
生前何度か博士にお会いした
「学問をいかに産業化するか」が口癖だった


現在的矢には佐藤養殖場があり 年間生産は殻つき200万個 剥き身7000kg.を
出荷している 増産要求は多いがしかし 頑としてその量を守っている
品質や味を維持するに最適の量だという
鳥羽市浦村の牡蠣とは格の違う逸品
パールロード沿線上浦村地区には「牡蠣食べ放題」の看板が並ぶが
佐藤の牡蠣(的矢かき)はこのような行為はしない

「的矢かきフルコース」を出す料理旅館は数軒あり
昼食で5000円くらいからだとおもう
「佐藤の牡蠣」はブランド品なのだ
二年仕込みの牡蠣の塩辛「海生味」は珍味


佐藤忠勇(さとう ただお)
東京本所生まれ(1887~1984)
1962年 藍綬褒章
1965年 勲4等叙勲
1978年 日本水産学会 名誉会長
1984年 4月1日 97歳で天寿を全うされた




的矢牡蠣 佐藤養殖場